「胃カメラを受ければ、ピロリ菌に感染しているかその場でわかるのだろうか」と疑問に感じていませんか。健康診断でピロリ菌感染の可能性を指摘された人や、胃痛・胃もたれが続いている人のなかには、胃カメラだけで診断できるのか気になっている人もいるでしょう。
胃カメラでは、胃粘膜の発赤や萎縮、胃ひだの変化などから、ピロリ菌感染を疑う所見を確認できます。ただし、内視鏡画像だけで感染を確定することはできません。感染の有無を判断するには、胃の組織や胃液を用いる検査、尿素呼気試験、抗体検査、便中抗原検査などが必要です。
この記事では、胃カメラでわかるピロリ菌感染の所見、感染を調べる検査方法、検査を受ける際の注意点、感染が判明した後の流れを解説します。胃カメラやピロリ菌検査を受けるべきか迷っている人は、受診時に医師へ相談する際の参考にしてください。
胃カメラでは、胃粘膜の色や表面、ひだの形などを観察し、ピロリ菌感染が疑われる変化を調べられます。しかし、ピロリ菌は非常に小さな細菌であり、通常の胃カメラで菌そのものを直接見て診断するわけではありません。内視鏡所見は感染の可能性を考えるための重要な情報ですが、それだけで陽性・陰性を確定することは困難です。
感染の有無を判断するには、胃カメラ中に採取した組織や胃液を調べる方法、呼気・血液・尿・便を用いる方法などがあります。どの方法を選ぶかは、胃粘膜の状態や過去の除菌歴、服用中の薬、初めて感染を調べるのか、除菌後の判定を行うのかによって異なります。
また、胃カメラには、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ポリープ、胃がんなど、胃の病変を直接観察する役割もあります。ピロリ菌検査の結果だけで判断せず、胃カメラの所見と追加検査の結果を合わせて評価することが大切です。

ピロリ菌に感染している胃では、感染していない胃とは異なる粘膜の変化がみられることがあります。ただし、感染期間や除菌歴、胃粘膜の状態によって見え方は異なります。所見があるだけで現在の感染を確定できるわけではないため、追加検査と合わせて判断します。
ピロリ菌に感染した胃では粘膜に炎症が起こり、胃の内側が全体的に赤く見える場合があります。赤みが均一ではなく、まだらな色調として観察されることも、感染を疑う所見の1つです。
白く濁った粘り気のある粘液が胃粘膜に付着することもあります。粘液が多いと胃粘膜の表面が見えにくくなるため、胃カメラでは水で洗い流しながら、粘膜の色や形を観察します。
ただし、発赤や粘液の付着は、ピロリ菌感染だけで起こる変化ではありません。胃全体の所見や、ほかの検査結果も踏まえて医師が判断します。
胃の内側には、胃が食べ物に合わせて広がったり縮んだりするためのひだがあります。ピロリ菌による炎症が起こると、胃のひだが腫れて太くなり、曲がりくねって見えることがあります。
とくに胃体部にひだの腫大や蛇行がみられる場合は、感染を疑う所見の1つとなります。粘膜の発赤や白濁した粘液など、ほかの変化を伴うことも少なくありません。
ただし、胃ひだの太さや形には個人差があり、ひだの変化だけで感染を断定することはできません。胃粘膜全体の状態を観察し、必要に応じてピロリ菌検査を追加します。
ピロリ菌による炎症が長く続くと、胃液を分泌する組織が減り、胃粘膜が薄くなることがあります。この状態が萎縮性胃炎です。胃カメラでは胃のひだが少なくなり、粘膜の下にある血管が透けて見える場合があります。
萎縮が進むと、胃粘膜の一部が腸の粘膜に似た状態へ変化する腸上皮化生がみられることもあります。白色調や灰白色調の粘膜、表面の不整などとして観察されますが、通常の胃カメラ画像だけでは判別が難しい場合もあります。
必要に応じて画像強調観察や組織検査を行います。萎縮性胃炎や腸上皮化生は除菌後にも残ることがあるため、現在の感染状況は別の検査で判断します。
ピロリ菌検査は、胃カメラを用いる方法と、胃カメラを用いない方法に分けられます。
胃カメラを用いる検査:胃の組織や胃液などを採取して調べる方法
胃カメラを用いない検査:呼気・血液・尿・便を用いて調べる方法
検査ごとに特徴が異なるため、胃の状態や服薬状況、検査の目的に応じて選択します。
胃カメラを用いる方法では、観察中に胃粘膜の一部を採取するほか、検査中に吸引した胃液を含む液体を利用する検査もあります。胃の状態を直接観察しながら、必要な検体を得られる点が特徴です。
ただし、ピロリ菌は胃内に均一に存在するとは限りません。組織を用いる検査では、採取した場所や胃粘膜の状態によって、感染していても陰性になる可能性があります。
迅速ウレアーゼ試験は、胃カメラで採取した胃粘膜の組織を専用の試薬に入れ、ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素の働きを調べる方法です。
ピロリ菌が尿素を分解するとアンモニアが作られ、試薬の性質が変化します。その色の変化から感染の可能性を判定する仕組みです。
比較的早く結果を得られる検査ですが、採取部位や服薬状況などによって結果が影響を受ける場合があります。
鏡検法は、胃カメラで採取した胃粘膜の組織を染色し、顕微鏡でピロリ菌の有無を調べる方法です。菌の存在だけでなく、胃粘膜の炎症や萎縮、腸上皮化生などの組織変化も観察できます。
採取した組織に菌が含まれていない場合や、菌数が少ない場合は、感染していても見つけにくいことがあります。そのため、胃粘膜の状態を踏まえて採取する場所を選ぶことが重要です。
培養法は、胃粘膜から採取した検体を、ピロリ菌が育ちやすい環境で培養し、菌が増えるかどうかを調べる方法です。結果が出るまでには時間がかかりますが、実際の菌を取り出して詳しく調べられます。
培養に成功した場合は、どの抗菌薬が効きやすいかを調べる薬剤感受性試験につなげることも可能です。除菌治療がうまくいかなかった場合や、使用する抗菌薬を検討する場合などに役立つことがあります。
核酸増幅法は、胃液を含む検査中の回収液などから、ピロリ菌のDNAを増幅して検出する方法で、令和4年(2022年)11月から保険適用となりました。菌の遺伝情報を調べることで、感染の有無を判定します。
検査方法によっては、クラリスロマイシンという抗菌薬が効きにくい可能性に関わる遺伝子変異も調べられます。治療前に薬の効きにくさを調べることで、除菌治療に使用する薬を選ぶ際の参考になります。
胃カメラを用いない方法には、尿素呼気試験、血液や尿による抗体検査、便中抗原検査があります。内視鏡を挿入せずに調べられるため、感染の診断や除菌後の判定などに利用されます。
検査結果が胃カメラの所見や過去の結果と一致しない場合は、別の検査方法を組み合わせて再評価することがあります。
尿素呼気試験は、検査薬を服用する前後の息を採取し、ピロリ菌が尿素を分解したときに生じる二酸化炭素の変化を調べる方法です。
胃の一部だけではなく、胃全体の感染状態を反映しやすいとされており、初めて感染を調べるときや、除菌できたかを判定するときに用いられます。
検査前の飲食や服薬には指示があります。正確に判定するためにも、医療機関から案内された準備方法を守りましょう。
抗体検査は、ピロリ菌に対して体内で作られた抗体を、血液や尿から調べる方法です。採血または採尿で検査でき、胃酸分泌を抑える薬の影響を受けにくいという特徴があります。
一方、除菌後も抗体が長期間残ることがあり、陽性だからといって現在も感染しているとは限りません。除菌後の経過期間や過去の検査結果を踏まえ、現在も感染しているかを調べる検査を追加する場合があります。
便中抗原検査は、便に含まれるピロリ菌由来の成分を調べる方法です。現在の感染を調べるだけでなく、除菌できたかを判定する際にも用いられます。
呼気を採取する必要がないため、尿素呼気試験を受けにくい場合にも選択肢となります。検査前の注意事項は使用する検査方法や服薬状況によって異なるため、医療機関の案内に従ってください。

ピロリ菌検査は、服用中の薬や検査を受ける時期によって結果が変わる場合があります。また、保険診療になるかどうかは、検査目的や胃の病気、これまでの検査結果によって異なります。正確な判定と費用の行き違いを防ぐため、事前に確認しておきたい点を解説します。
胃酸分泌を抑える薬や抗菌薬などには、ピロリ菌の働きや菌数へ影響し、検査結果を偽陰性にする可能性があるものがあります。尿素呼気試験や迅速ウレアーゼ試験などを受ける際は、薬の中止または服用終了から一定期間を空けるよう指示されることがあります。
ただし、薬を急に中止すると、胃の症状や治療中の病気に影響する可能性があります。自己判断で休薬せず、薬の名前や服用期間を医師へ伝えてください。お薬手帳を持参すると、検査方法や実施時期を検討しやすくなります。
市販の胃薬や、ほかの病気で処方された抗菌薬も判定に関係する場合があります。処方薬以外も含めて申告しましょう。
ピロリ菌検査や除菌治療は、すべてのケースで保険診療になるわけではありません。保険診療でピロリ菌検査や除菌を行うには、胃カメラを受け、胃・十二指腸潰瘍や胃カメラで診断された胃炎などが確認されることが前提になります。そのため、胃カメラを受けずに、採血や便の検査だけを保険診療で先に行うことはできません。
一方、症状や対象となる病気がなく、感染の有無を調べることだけを目的として検査を受ける場合は、自費診療となる可能性があります。人間ドックや自費健診で陽性となった場合は、あらためて胃カメラを受けたうえで、必要に応じて除菌へ進む流れとなります。なお、保険診療での除菌治療は2回まで認められており、それでも除菌できない場合の3回目以降は自費診療となります。
胃カメラ、感染診断、除菌治療、除菌判定には、それぞれ費用がかかります。実際の金額は検査方法や保険負担割合などで変わるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
ピロリ菌に感染していても、自覚症状がない人は少なくありません。そのため、胃の症状だけで感染の有無を判断することは困難です。症状、健診結果、過去の病歴、家族歴などを踏まえ、胃カメラやピロリ菌検査を検討したい主なケースを紹介します。
みぞおちの痛みや胃もたれ、食欲低下、吐き気などが続く場合、ピロリ菌による胃炎や胃・十二指腸潰瘍が関係している可能性があります。ただし、同じ症状は逆流性食道炎や機能性ディスペプシア、胃がんなどでも起こります。
症状だけで原因を決めつけず、続く場合や悪化している場合は消化器内科などを受診しましょう。胃カメラによって食道・胃・十二指腸の状態を観察し、所見に応じてピロリ菌検査を追加します。
吐血や黒い便がみられる場合は、消化管から出血している可能性があります。速やかに医療機関を受診し、出血量が多い、ふらつきや冷や汗があるなどの場合は救急受診を検討してください。繰り返す嘔吐や急な体重減少がある場合も、放置せず受診しましょう。
健康診断や人間ドックで、ピロリ菌抗体の陽性、胃粘膜の萎縮、胃の変形などを指摘された場合は、医療機関で詳しい検査を検討します。抗体検査だけでは、現在の感染状態を正確に判断しにくいケースがあるため、自己判断で放置しないことが大切です。
バリウム検査で要精密検査となった場合は、胃カメラで粘膜を直接観察します。ピロリ菌感染を疑う所見がみられた場合には、感染状況を調べる検査を組み合わせます。
受診時に健診結果の用紙を持参すると、指摘された内容や必要な検査を医師が判断しやすくなります。
ピロリ菌は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍と深く関係しています。過去に潰瘍と診断されたものの、ピロリ菌検査を受けた記憶がない人や、除菌できたかを確認していない人は、感染状況について医師へ相談してみましょう。
潰瘍が治ったあともピロリ菌感染が続いていると、再発する可能性があります。一方、鎮痛薬などの薬剤が原因となる潰瘍もあるため、すべての潰瘍がピロリ菌によるものではありません。
過去に診断された時期や受けた治療、検査結果がわかる資料があれば、受診時に持参してください。
家族にピロリ菌感染者や胃がんになった人がいると、自分も感染しているのではないかと不安に感じることがあります。家族歴だけで感染の有無を判断することはできませんが、検査の必要性を判断する材料の1つになります。
ピロリ菌は主に幼少期に感染すると考えられており、同じ生活環境で過ごす家族内に感染者がみられる場合もあります。ただし、家族に感染者がいるからといって、必ず自分も感染しているわけではありません。
家族の検査結果や胃がん歴が気になる場合は、本人の年齢や胃の症状、これまでの検査歴も含めて医師へ相談してください。

検査でピロリ菌感染が確認された場合は、胃の病気や体調、薬のアレルギーなどを踏まえて除菌治療を検討します。薬を飲み終えただけでは、除菌できたかどうかはわかりません。治療後に判定検査を受け、除菌後も胃の状態に応じて胃カメラによる経過観察を続けることが大切です。
日本の保険診療で行われる一般的な除菌治療では、胃酸の分泌を抑える薬1種類と、抗菌薬2種類の合計3種類を、通常7日間服用します。薬のアレルギーや過去の治療歴などによっては、治療内容が異なる場合があります。
処方された薬は、指示された回数と期間を守って服用することが大切です。服用中には、下痢や軟便、味覚の変化、発疹などが現れる場合があります。体調に変化があったときは、自己判断で服用を中止せず、医療機関へ連絡して指示を受けてください。
息苦しさや全身のじんましんなど、強いアレルギー症状がある場合は速やかな受診が必要です。1回目の治療で除菌できなかった場合は、抗菌薬を変更して2回目の治療を行うことがあります。
除菌薬を飲み終えても、ピロリ菌が完全にいなくなったとは限りません。除菌治療の終了後は一定期間を空け、尿素呼気試験や便中抗原検査などで、除菌できたかどうかを調べます。保険診療では、除菌終了後4週間以上経過してから判定を行います。
薬の影響が残っていると、実際には感染が続いていても陰性となる可能性があります。胃酸分泌を抑える薬などについて個別に指示される場合があるため、自己判断で検査時期を早めたり、薬を中止したりしないでください。
判定検査を受けずに治療を終えると、感染が残っていても気づけません。検査結果を確認するところまでが、除菌治療の一連の流れです。
除菌に成功すると胃粘膜の炎症が改善し、胃がんの発生リスクを下げる効果が期待できます。しかし、除菌前に萎縮性胃炎や腸上皮化生が進んでいる場合、除菌後も胃がんのリスクがゼロになるわけではありません。
そのため、除菌に成功したあとも、胃粘膜の状態に応じて胃カメラによる経過観察が勧められます。検査の間隔は年齢や萎縮の程度、過去の病変などによって異なるため、医師と相談して決めましょう。
除菌できたことだけで安心して胃カメラを中断せず、医師から案内された時期に検査を受けることが大切です。
胃カメラでは、胃粘膜の発赤や白濁した粘液、太く蛇行したひだ、萎縮性胃炎などから、ピロリ菌感染を疑うことができます。ただし、内視鏡画像だけでは感染を確定できません。胃の組織や胃液を調べる検査、尿素呼気試験、抗体検査、便中抗原検査などを用いて、感染の有無を判断します。
検査結果は、胃酸分泌を抑える薬や抗菌薬の影響を受ける場合があります。薬は自己判断で中止せず、服用状況を医師へ伝えてください。感染がわかった場合は除菌治療を行い、治療後には除菌判定が必要です。除菌に成功しても胃がんのリスクが完全になくなるわけではないため、胃の状態に応じた経過観察を続けましょう。
当院は、松戸市の常盤平駅から徒歩3〜4分にある、胃カメラ・大腸カメラを中心とした消化器内科のクリニックです。胃カメラは鼻または口からの方法を選べ、胃カメラと同時にピロリ菌感染の有無をその日のうちに調べることもできます。胃の不調が続いている人や、健診でピロリ菌感染・胃粘膜の異常を指摘された人は、お気軽にご相談ください。
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